公開記念イベント「愛してよ 映画講座」

1月13日 『愛してよ』トークイベント
「愛の演出論講座 パート2 ~ピンク映画は“愛”を見つめ続けている~」

1月13日 18:40~ シアターイメージフォーラムにて
ゲスト:サトウトシキ(監督)&女池 充(監督) × 福岡 芳穂

福岡 「どうも今日は皆さん寒い中ありがとうございます。福岡です。えーと今日はサトウトシキさんと女池充さんにわざわざ来て頂きまして…(二人を見る)」
サトウ・女池「…(じーーっと下を向いていて・場内爆笑)」
福岡 「(笑)お二人とどういう関係かといいますと、僕ももともと若松プロダクションというところにおりましてピンク映画から始め、一番最初に助監督についたのが高橋伴明さんで、自分自身の監督デビューもピンク映画でありまして。でもトシキさんと直接コンタクトっていうのは昔はないんだよね」
サトウ「僕、ずいぶん前助監督を始めた頃に、文芸坐の地下かなんかでピンク映画の特集かなんかをやったときがあったんですよ。当時の新人監督というか、話題になった人というか、4、5人の特集。その中に福岡さんがおられたような気がするんですね。そのときに別にお話したわけじゃないですけど。まあそのときに映画は観させていただいたという…」
福岡 「僕はもちろん知ってましたよずっと、もうサトウトシキと言えば有名な…」
サトウ「まーもう調子がいいと言うか(笑)えーっとあの、僕と女池の間にもう一人上野俊哉監督っていうのがいるんですけど、彼にはよく助監督をやってもらって。福岡さんの助監督もやってたんですよね」
福岡 「そうそう上野にはよく何本かやってもらってましたね」
サトウ「その頃からお話はよく聞いてたんです。で、僕はその、若松プロとか、伴明さんの映画とか、割と好きだったんで。えーまだハタチ前の頃ですかね、あの、若松プロに電話をしたり、その失礼な話なんですけど助監督をやらせてくれとか言ってたもんですからなんとなくその、若松プロの人たちにはちょっと興味があって、なんかその手の本なんか読むとよく福岡さんの名前なんか出てらっしゃったので…ま、上野に聞くと、まあ武闘派ですと(笑)怖いのでなかなか声をかけなかったんですけど(笑)」
福岡 「そんな感じで、飲んだりはときどきしてるんですけど。で、女池さんとは、えー(一枚のポスターを掲げて)僕の『イカせたい女』という96年公開のピンク映画なんですけどこのときに女池さんに助監督をやってもらいまして、もう一人の助監督が、やっぱりもう有名な監督の坂本礼さんで、今日客席に来て頂いてますけど。その二人が助監督をやってくれて。でこのときのキャメラマンが長田勇市さんという、僕も何本も一緒にやってもらったし伴明さんとか、いろんな人の撮影をしてる人なんですが、でその撮影助手として、今回の『愛してよ』のカメラをやってくれた柴主さんもこの現場にいたという…で、なおかつ出演でサトウトシキさん…」
サトウ「でぇー(苦笑)」
福岡 「瀬々敬久さん、佐藤寿保さん、みんな出てるという、ヘンな映画…(ポスターの惹句を読み)“2001年、SEXは戦争となった”って96年につくったんでこれ一応近未来モノなんですけど(笑)フィルムっていうのは1秒24コマなんですがこれは全篇30コマで撮った、でなおかつピンク映画っていうのは予算がないから同時録音っていうのはできないんで普通は全部アフレコになるんですけども、これのときにはカメラを回した後にすぐDATの録音機を持って、はい同じことやってっつってすぐ音をその場で録って、なんちゃってシンクロみたいなことをやってそれを編集部に繋いでもらったというような…あの、そういういい加減な手法を編み出したりとかした作品なんですけど…(女池さんを見て)みたいな、ですかね」
女池 「はい、間違いございません(笑)僕はですね、人生の要所要所に福岡さんアリって感じなんですよね(笑)えーこの業界に入るキッカケになったのはさっきも名前の出た上野さんから電話を頂いて、今から会うかって感じで会ったんですね、そのときの現場がトシキさんだったんですけれども、で、そのとき上野さんと代々木の喫茶店で会って話してるときに、僕はそのちょっと前に福岡さんの『事件屋家業』を見てたんですけど、高田馬場のパール座で。で、上野さんがそれにチーフでつかれていてそんな話をしたんです。いやーあれはタイヘンだったんだよって(笑)話をですね、しまして、それが第一歩だったんです。で、今の『イカせたい女』に助監督でつかせてもらって、でそのときに、女池もそろそろ監督やってもいいんじゃないかみたいなことを福岡さんがポロッとどこかで呟いて頂けたそうで、それがキッカケとなって僕は次の年にピンク映画を撮れることになったんです。でまだ要所がありましてですね(笑)2001年僕は、ある映画のメイキングの仕事で京都に行ったんですけど、その仕事も福岡さん経由で頂いて、その京都がとっても楽しくて(笑)でそれ僕の中ではかなり大きな経験でして、まあその京都のひと月半がとても楽しかったんで、去年文化庁の関係でニューヨークに一年行かして頂いたんですけども京都でひと月半であれだけ楽しかったんだからニューヨークの一年はどれだけ楽しいんだろうと思って行ってきたんです(笑)まあそんな感じで要所要所…」
福岡 「ニューヨークの一年は楽しかったの」
女池 「もうここでは言えないくらい楽しかったですね(笑)」
福岡 「女池さんはつい最近の去年12月に、ご覧になった方もいらっしゃると思うんですけど東中野のポレポレで『花井さちこの華麗な生涯』という作品と『ビタースイート』という作品を連続ロードショー公開というすごいことをやったばかりで…ご覧になった方いらっしゃいますか(客席で数人の手が挙がる)」
女池 「何でそんなこと聞くんですか(笑)」
福岡 「いやあれが9.11とかモチーフにしてたんで、その楽しかったニューヨークの一年とか関係あるのかなと思って」
女池 「二本ともニューヨークに行く前につくったんで」
サトウ「だから撮ってないんですよそんなに(笑)僕も女池も撮ってないんです、数年(笑)」
女池 「なんか外の気温より寒くなってきた(笑)」
福岡 「えーーっとぉ(笑)サトウトシキさんは近々で言うと『ちゃんこ』という、広島大学の相撲部の実話を基にした映画を去年撮られて」
サトウ「3月に公開になります」
福岡 「皆さんよろしくお願いします、『ちゃんこ』です。3月公開です。どこで」
サトウ「新宿トーアとTジョイ大泉、ですね。よろしくお願いします」
福岡 「女池さんのさっきの2作品も5月頃にはDVDに」
女池 「なると思いますその頃。よろしくお願いします」
福岡 「よろしくお願いします…ってことで終わったら『愛してよ』の話、何にもしてないし(笑)あのーどうだったんでしょうか(笑)」

女池 「僕、当然フツウに観ようと思ってたんですけども、えー観る前に福岡さんからですね、えー監督協会というのがあるんですがそこのHPに『愛してよ』についての監督インタビューのインタビュアーというのを仰せつかりまして。あ、あちゃーと思ったんですけど(笑)まあそれがありながら観たんでなんか純粋に楽しめなくなった部分もあって。まあこれから観る方もいらっしゃるんですけど、かなりハードな題材を扱ってる映画だと思うんですね。僕そのインタビューのときほとんど沈黙ばかりであんまり福岡さんに何も聞けなかったんですけど…なんかこう、ビシバシと…福岡さんという人を少なからず知ってしまってるというのもあるんですが何かすごく気合いの入ったと言うか覚悟のある…まあ映画ってみんな覚悟があって撮ってると思うんですけど、すごくそれを感じた映画だったんだけど…どうしようって思ってそれでなんか舞い上がってインタビューのときも真っ白になってしまったんですが(笑)んーそのときも結局これから映画を観る人たちに、あ、どんな映画だろうとか観てみたいとか思ってもらえるように話を展開していけたらなと思ってたんですがなかなかそうもいかず結局なんかこう、映画の内容を追って喋ってしまって…なので…これから観る方がいらっしゃると思うと何を喋ったらいいかすごく難しい映画なんだと思うんですけど。んー僕は、僕はですね、なんだろう…面白かった。映画を観て面白かったっていうよりもなんかこう、人に会ったような、こんな人がいてこういう人と出会ったみたいな印象を受けて、何だろうなこの、人格、みたいなものが、映画格、みたいなものがある映画だなあと思って…すごく近くに感じられた映画ではあったんですが…すみません抽象的な言葉ばっかり言って(笑)そんな、映画を観て面白かったと思いつつ、そうじゃないところになんか、人と喋ってるみたいな、そんな疑似体験みたいなものを感じました。…うーん、完結してしまった。自分の中で(笑)」
福岡 「怒られてるような気になってきました、なんか(笑)さっきの監督協会の公式サイトですが、日本映画監督協会で検索すると出てくるんで是非皆さん見ていただきたいと思うんですけど、監督が監督にその新作についてインタビューするっていうコーナーがあって、『ちゃんこ』に関しては僕がトシキさんにインタビューしてるっていうのがあるんですね。そのときにトシキさんがふっと…なんか僕にとっては『ちゃんこ』っていう青春の構図、爽やかなというか、いや爽やかなだけとは言えないもっと中身の豊かなとっても好きないい映画なんですけど、なんかそういうのがサトウトシキと似合わない気がして(笑)失礼なんだけど(笑)でインタビューのときにそんなこと言ったらトシキさんがふっと、いや僕はずっと、爺ちゃんと孫が一緒に手をつないで観にいけるような映画が撮りたかったし、そういう中で育ってきたんだみたいなことを仰って…なんか爺ちゃんと孫だったり親と子だったりみたいな…で、『愛してよ』を観てもらった後に彼と会ってどうだったって話をしたときに、やっぱりなんか親から子どもだったり、人から人へだったり、伝えていくものっていうのがあるんですよねみたいな話をちょっとされたんで」
サトウ「いやー、ありがとうございました『ちゃんこ』の話までして頂いて、ホントにいい先輩だと思います(笑)僕って近い先輩というのはあまり同業者にいなかったんで、福岡さんというのは僕は初めてできた近い先輩だと実は思ってるんですけど。あのーそうですね、僕はやっぱりどっちかって言うと子どもの方から観るというか観ちゃったんですね。第一印象というのはまあこう言うとまた生意気になるんですけど、若松プロの…僕なんか若松プロに電話してですね助監督にしてくれと言って、あー今は取ってないんだとか言われてた頃のことをちょっと少しね思い出して、若松プロとかってタイトルがこれは出てきてもいいんじゃないか、なんていうふうに思ったんですよね、これは俺だけかもしれないんですけど。なんかちょっとあの頃とはまた形を変えた、若松プロの映画を観たような、なんかとっても気持ちがよかったんですね。それであとまた母親の話でもあるじゃないですかこれは、やっぱりそのへんは僕はなんか面白い面白くないっていうふうに言うよりもなんかこうとっても母親のことを思い出したり。僕もマザコンでしたから。映画観たら福岡さんになんか言わなきゃいけねえだろうと思ってですね、家帰ってその母親のことについていろいろ書いたりしたんですよ、実は。えー、ですけどですね、ちょっと恥ずかしくてですね、やっぱりメールできなかったですね(笑)」
福岡 「してよ(笑)」
サトウ「途中で捨てちゃいました(笑)」
福岡 「なんかあの、さっきも女池さんから、映画じゃなくて人と会ったとか、みんな誰も映画のこと語ってくれないんですけど(笑)例えばいろんな映画誌とかウェブサイトでの『愛してよ』に関する映画評を見てもなんかこうプロの批評家の方たちですらが、映画評の最後だったりアタマだったりに自分の子ども時代のことを書いてたりとかして…何かそういう部分に、こう入っていく映画であってくれるのかなと。そうであったら逆に嬉しいなと。映画だけで完結するっていうものがだいたいあまり好きではないので僕自身が。一人ひとりの中に入っていってその人の中のドラマ、とかとなんか、結びつくのか相反するのかわかんないですけど、そういうものとして映画が、完成していってくれればいいなみたいなことも思ってたりもするので。また映画って、観る方のコンディションとかによっても違うじゃないですか」
サトウ「そうですね。あと、知ってる人がつくってる映画っていうのもあるんですよね。僕はその、これ言っちゃうと話がバレていくんで言えないんですけど…とっても自分に返ってくるものがあったって言うか。…あー親孝行しときゃよかったなとか、まあそんなことなんですけどね。なんかそういう意味で女池が言った少しヘビーな気持ちになるというのもそういうことなのかなと思ったんですけど」
女池 「いま仰ったように自分に返ってくるっていう…福岡さんと話をしてますとまあ先輩後輩の中だから余計なのかもしれないんですけども喋れば喋るほどそれが全部帰ってくる、んですね。何か聞くとそれはお前はどうなんだっていうふうに全部帰ってきてですね、いつも緊張してしまうんですけど(笑)あ、なんかもうこれ福岡さんそのまんまの映画なんだなとか。で、『イカせたい女』のときも、さっき福岡さん仰ったように現場で音録ったりなんかしてて、で、僕はピンクやっててそんなに他にいないんですけどやっぱり現場で音録ってつくってるんですが。まあピンクってホント自由なんだなっていうのはトシキさんたちの映画を僕が学生の頃観てても思ってましたし、現場入るようになって福岡さんみたいな映画づくりをしてる人を知って、映画ってやっぱり何でもありなんだなっていうのがすごく強くあって、それで監督になり、まあそこなんかを引き継ぎたいなとか、自分の映画を観てくれる若い人たちに特にそう思って欲しいなんていうことを思ったりしてるんですが。『愛してよ』なんかもホントにやっぱりこう、映画に捉われない映画をつくるっていうところが福岡さんっていうか福岡映画の一番の魅力であり、ま、だからこそそこはすごく危険な面も持っていると思うんですが。何だろうすごく何かを試されてるような気がするんですけど、でもその試されてるというのもすごく面白いことなんじゃないのかなあと、思います。僕はすごくそこが面白かったです。この映画を観てて。なんかすごく、刺激的な映画でした、ハイ…まる(笑)」

女池さんのピリオドでこの回のトークは終了しました。そして恒例のサイン入りTシャツ
&台本のジャンケンプレゼント。話の中に出てきた『イカせたい女』のポスターもプラス。
今日のTシャツにはサトウさん、女池さんのサインも。

福岡 「昨日に続き言いますけどすごいレアです。フツウ監督は人の作品のためにサインしません(笑)」
女池 「もらっていただいてありがとうございます(笑)」

本当に劇場に来てくださった皆さん、ありがとうございました。

HOME > 公開記念イベント「愛してよ 映画講座」 > 愛の演出論講座 パート2 ~ピンク映画は“愛”を見つめ続けている~

© 2006 『愛してよ』製作委員会